輸出などの海外取引がメインの会社の適格請求書について

(2022/6/20)

以前、消費税のインボイス制度についてその内容を簡単に説明しました。

そもそもですが、これは日本で始まる新ルールです。

そうなると、海外の会社と取引をしている会社(日本の会社)にはどのような影響があるのか、と疑問に持たれる方もいらっしゃると思います。

結論から言うと、特に影響はないことになるので心配はいらないのですが、その理由を説明したいと思います。

 

輸出とは?

この場合の輸出は、①商品を文字通り輸出する販売(日本から海外へ)と②海外の会社へのサービス提供(コンサル等)、の2つをイメージして頂ければと思います。①はともかく②も今回の話に関わってくることになります。

 

輸出は免税

普通、日本で商品を販売した場合には消費税がかかり、その消費税は商品を販売した会社が税務署に支払います。これは、日本で商品が消費(使う、食べる、など)されているということが消費税がかかる重要な理由になります。

一方、商品の輸出をした場合には、その商品の「消費」が行われるのは日本ではなく海外となります。その場合には日本では商品が消費されていないことになります。そこで、「日本の消費税は日本のルールなので日本で消費されていないのであれば消費税はかからないことにしよう」、というルールが作られています。輸出は免税(消費税はかからない)、とはこういうことです。

免税というのは販売する(輸出する)会社にとっては有利なことです。本体価格10,000円の商品を日本で販売する場合には普通は11,000円で販売し、1,000円を消費税として税務署に支払いますが、免税の場合にはそのような消費税の支払いがありません。よって、10,000円の商品をそのまま10,000円で販売しても良さそうです。その場合、輸出する商品の請求書には日本の消費税は記載しないのが一般的です。

 

インボイス制度における適格請求書と輸出の関係は?

2023年10月からインボイス制度が始まります。そして、適格請求書という請求書を発行することが必要になります。

適格というのは、辞書的には「資格を満たしていること」、を意味するようです。どのような資格なのかを言うと、請求書の記載事項として次の内容を記載していることを言います。ここでは一般的な請求書の記載事項(日付や会社名など)に「追加」して記載するべきものについて述べます。

  1. 登録番号(適格請求書を発行すると宣言した会社に対して発行される個別の番号です。消費税の確定申告をする会社に限られます。)
  2. 税率(8%か10%)ごとに区分した商品の(税率ごとの)合計金額
  3. 税率(8%か10%)ごとに区分した(税率ごとの)消費税の金額

大まかにいうとこのような情報を追加で記載することが必要になります。

ところで、インボイス制度が始まっても消費税の確定申告をする必要がない会社もあります。そのような会社の場合には「登録番号」がもらえないことになるので、適格請求書の発行も出来ないということになります。ただ、商品の輸出や海外へのサービス提供を主な事業にしているような会社は、多くの場合消費税の確定申告をしていると思われます。ここで詳しくは述べませんが、消費税の還付を受けている会社が多いと思われるためです。還付を受けるには消費税の確定申告が必要です。よって、海外へ輸出等をしている会社は「登録番号」は通常もらえることになります。

さて、適格請求書は登録番号の他にも税率ごとに区分した金額の情報を入れる必要がありますが、輸出などをする場合には先程述べたように「免税」となります。これは、8%でも10%でもありません。あえて言うと、消費税がかからないので0%の税率とも言われます。この免税の商品販売などについては、適格請求書の記載ルールはありません。なぜルールが無いのかと言うと、適格請求書は日本で消費税がかかる場合の請求書のルールだからです。なぜ消費税がかかる場合のみのルールなのかまで説明すると長くなるので割愛しますが、消費税がかかる取引に関連して日本のルールは不具合があると言われていて、それを修正するために適格請求書というルールを作った経緯があります。

結論として、輸出などをする取引について、適格請求書のルールは特に考える必要がないことになります。

 

登録番号は取得する必要があるのか?

輸出などをするときの請求書は適格請求書のルールは関係ないことになりますが、それではインボイス制度が始まっても特に何もしなくても良いのか、と考えることもあるかと思います。輸出などの取引の際にはそれでいいのですが、輸出の他にも何かしている場合には登録番号を取得し、適格請求書を発行出来るようになっておく必要がありそうです。具体的には日本国内でも少し商品を販売しているようなケースです。その場合にはインボイス制度の影響を受けることになりますので、予め準備しておいたほうが良さそうですね。

 

おわりに

輸出をメインにしている会社とインボイス制度の適格請求書の関係について述べました。基本的にはこれまで通りの請求書を発行して問題ないと考えられます。

ただ、適格請求書が発行出来るようになっておいた方が良い会社も中にはありそうなので、ご自身の会社の状況を確認して必要な対策をとっておく必要がありそうです。