(2025/6/16)
輸出の売上による日本の消費税還付とその証明方法
海外向けに商品やサービスを販売した日本の会社が、消費税の還付を受けられることが多いことをご存知ですか?
これは日本の消費税制度の中でも、よくあるけれど少しわかりづらい仕組みです。この記事では、「なぜ還付されるのか?」と「どんな取引が対象になるのか?」、また、「還付のための証明方法」を解説します。
なぜ輸出すると消費税が還付されるの?
まず大前提として、日本の消費税は「日本国内で消費されるもの」に対してかかる税金です。また、当然ですが、日本で定められた日本の法律です。
つまり、「外国で消費される商品・サービス」に日本の消費税をかけてしまうのはおかしい、という考え方がベースにあります。
例えば:
•A社(日本の会社)が日本国内で部品を仕入れて組み立てた製品を、アメリカのお客さんに輸出したとします。
•部品の仕入れ時には10%の消費税を払っているけれど、その部品は日本では使われず、輸出されてアメリカで使われます。
•A社に対して部品を販売した日本の会社(B社)はA社に対して消費税を請求することになります。そのB社は日本の税務署に消費税を納税することになります。つまり、間接的にA社は(B社を通じて)消費税を税務署に払っていることになります。
この場合、「仕入れ時に払った消費税」は最終的に日本国内での消費には使われていないため、A社はその分の消費税を国から還付(返してもらう)ことができるのです。
このように、「輸出は日本国内での消費ではないから、消費税をかけない」という考え方に基づいて、仕入時の税金が戻ってくる仕組みが存在します。(もし輸出に対して消費税をかけてしまうと、それを最終的に負担するのはアメリカのお客さんになるので、実質的に日本の消費税相当額をアメリカに対してかけてしまうことになります)
どんな取引が「輸出取引等」として消費税の還付対象になるの?
「輸出取引等」に該当するものは消費税をかけないことになります。消費税のルールでは主に以下のようなものが該当します。一般的な輸出という言葉から想像できないようなものもこの「輸出取引等」に該当することになります。
1. 商品の販売としての輸出:自動車などの輸出
2. 外国の会社や消費者に対するサービスの提供:情報提供、コンサルティングなど
「輸出取引等」は他にも細かく決められていますが主なものは概ねこの2種類になると考えられます(家電量販店などが該当する免税店はここでは割愛します)。
これらの該当する取引を行っている会社(個人事業も含みます)は還付を受けられる可能性があります。
ただ、いくつかの条件を満たす必要があり、次のようなことに注意する必要があります:
• 消費税のルール上、課税事業者であること(免税事業者は対象外)。→どちらに該当するのかがよくわからない場合は注意が必要です。
• 輸出取引等の売上割合が高いこと。→輸出ではない売上には10%(8%)の消費税がかかるのでその割合が高いと還付ができないことがあります。
• 消費税の確定申告時に「還付申告」を行うこと→通常は納税のために確定申告をしますが、還付のための申告が必要となります。
• 輸出をしたことが証明できる書類の保存(輸出許可書や契約書など)→取引ごとに厳密に定められているので注意が必要です。
この中でも重要なのは課税事業者かどうかという点と輸出の証明ができる書類があるかどうかです。課税事業者かどうかについては税理士などの専門家に相談すると基本的にはすぐにわかることですが、輸出の証明については会社の日々の取引が関連することなので、会社の社長や営業・経理が常に意識しておかなければならないことです。誤った書類を保管していたり、書類が何もないということだと還付ができないことになってしまいます。
輸出の証明をするために必要な書類とは?
「商品の販売としての輸出」と「外国の会社や消費者に対するサービスの提供」が主な輸出取引ですが、その証明はどのようにしたら良いのでしょうか?それぞれ整理します。ちなみに証明が不十分なものについては、(実際に輸出していたとしても)輸出ではない売上に該当するものとして10%(8%)の消費税がかかることになります。
まずはシンプルな方から説明します。「外国の会社や消費者に対するサービスの提供」ですが、契約書等を保存することになります。この外国に対するサービスについては基本的には何か手続きをして輸出をするというものではないはずです。そうなると、当事者同士で何かやり取りをして完結するものなので、それに関する書類を作成することで証明書類になります。契約書等を作成するにあたっては、次の項目が記載されている必要があります。
1. あなたの会社の氏名・住所
2. 相手の会社等の氏名・住所
3. サービス等の提供日
4. サービスの内容
5. 対価の額(売上の額)
次に「商品の販売としての輸出」について説明します。こちらについてはどのように輸出するのかによって保管するべき書類が異なります。
1. 輸出許可通知書
こちらの書類が最もよくある輸出の証明書類です。DHLやFedExなどの海外への輸出サービスを提供している業者に依頼する場合にはこちらの書類を保管することになります。なお、自分から依頼しないと貰えない可能性もあるので輸出のたびにしっかりもらって保管しておきましょう。なお、事情によりあなたの会社の名義で輸出していないこともありますが、原則はあなたの会社の名義でないといけないので注意が必要です(詳細は割愛しますが例外的な扱いもあります)。
2. 郵便物の引き受けを証明する書類及び輸出者の名称等が記載された伝票等
輸出する商品の価格が20万円以下で郵便を利用して輸出する場合は上記の書類を保管する必要があります(20万円超の郵便の場合は輸出許可書を保管することになります)。上記の書類は端的に言うと、輸出の記録(輸出者や輸出先の氏名等)が残る方法で輸出する必要があるということです。具体的にはEMSや書留が該当します。また、商品名や品名ごとの数量と価格が記載されていない場合もありますが、その場合にはご自身で追記しておく必要もあります。
まとめ
輸出による売上に対する消費税の還付は、「日本国内で消費されていない取引には消費税を課さない」という日本の消費税法の原則に基づく制度です。
対象となるのは、商品の輸出だけでなく、外国の企業や個人に提供される役務(サービス)の提供なども含まれます。
ただし、還付を受けるためにはいくつかの重要な条件があります。特に以下の2点は実務上とても重要です:
• 課税事業者であることの確認(免税事業者は還付対象外)
• 輸出取引を証明できる適切な書類の保存
証明が不十分な場合は、たとえ実際に輸出していても還付は受けられず、逆に消費税の納税義務が生じてしまうことがあります。
消費税還付は正しく理解し、証明書類の準備や保存を怠らないことが重要であることがわかると思います。日常的な取引の中で、営業担当者・経理担当者・経営者がこれらのルールをしっかり理解しておくことが大切です。
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